日頃は森八のお菓子をご愛用いただき、まことにありがとうございます。
森八は寛永2年の創業以来、400年の歴史を歩み続けておりますが、私の女将歴はようやく20年程です。難しいことや、辛いことも、いっぱいありましたが、日々の新しい発見、商売の喜びを糧に、ここまでやってこられました。
特に東京の下町育ちの私にとって老舗の女将などというのは全くの別世界。最初は何が何だか分からないうちに、日々格闘の連続で、目の回るような毎日が過ぎて行きましたが、気がつくと、以前とは違った自分がいることに、何度も驚かされました。そんな私をずっと支えてくださったのは、やはりお客様の笑顔と暖かい励ましの言葉でした。どんなに疲れていても、泣きたい気持ちの時でも、「応援しているから、がんばってね」の一言ですべてが吹き飛んでしまいます。
最近ようやく、「私が女将です」と自信を持って言えるようになりました。私にとっても、森八にとっても最高の宝物、それはすばらしいお客様たちです。このすばらしいお客様たちに、少しでもご恩返しができますよう、今日も一生懸命に努めさせていただきます。
どうか、これからも宜しくお願い致します。
株式会社 森八 取締役女将
中宮 紀伊子
岩手県一の関市生まれ。東京下町育ち。
夫の中宮嘉裕(現社長・18代当主)と結婚し、金沢へ。
同社東京店勤務等を経るが、バブル期のつまづきから平成7年に和議を申請。
同時に取締役となり、社長である夫とともに再建への道を歩む。
平成12年再建の過程がドキュメント番組としてNHKより全国に放送され、大反響を呼ぶ。
平成14年、再建への闘いの日々をつづった『あなた、私も闘います』を叢文社より出版。
平成16年3月には和議を終結し、再建を完了した。
現在は「世の中へのご恩返し」を目標に、日々、女将として陣頭指揮にあたる。
理想の企業像は「小さくても、永遠に生き続ける企業」。
趣味は山歩きと温泉めぐり。二女の母。
1995年、370年の和菓子の老舗「森八」が倒産の嵐に巻き込まれた。
「森八は私物ではない、日本文化の誇りを守れ」の激励の言葉に涙と共に決然と立った夫と妻。激励の言葉の背後にひそむ企業の生命力の本質は?奇跡のように復活した日、振り返ると父母の愛に飢えた子供たちの姿がそこにあった。暖簾を守った闘いの記録。
あの経営危機から16年間、前だけを見つめて一心不乱に歩んできた老舗の女将が今ようやく自分の人生を振り返り、心の底からわき上がってくる感謝の気持ちをお伝えします。
生まれ変わった森八の真の姿、経営者でもある自分たち夫婦の考え方、生き方などをしるしつつ、行間に込めた人々への感謝の念を伝えようと、9年ぶりに筆をとった、渾身作。